いきおいで配送の仕事を辞めたものの、次の仕事のあてが全くなかったぼくは
どうしよう…
完全に途方に暮れていました。
それでも、もともと物欲もなく
旅行もせず(連休もなかったので、できなかったというのが正しいかも)
当時の彼女にブランド品を貢ぐ…
…あいや、愛のこもったプレゼントをする以外は、
ほとんどお金を使うことがありませんでした。
そのおかげで、
気が付けば、貯金が250万ほどありました。
(これが多いか少ないかは別としまして)
預金通帳を眺めては、
「ぐひひ…まだ働かなくても大丈夫だ…」
「ぐひひ…動かなければ、腹も減らない…」
完全に油断した日々を過ごし、さらには
「これを楽して増やす方法でもないものか…ニシシ」
と、まじめに働かずに
楽をする気まんまんでした…笑
わらにもすがる想いで始めたのは…
もう15年以上前のことなので、どういった経緯か覚えていないのですが、
(いや、楽したかっただけだろ!)
ぼくが次に挑んだのは、
株式市場でした。
もちろん、それまで一度も経験はありません。
そして、
このころすでに、自分でも非常に要領が悪い自覚はあったので、
やはり事前の学習が重要であると考えました。
そこで、アマゾンとブックオフで株取引に関する本を10冊以上購入し、読みふけ、
それで自分なりに十分学んだつもりになってました。
今思えば、この時勉強したことは、
「誰でも儲かる○○投資法!」
「20万→1000万にした○○法!」
といった、いわゆる「楽して儲かる系ノウハウ」ばかりであり、
本質的なことは何一つわかっていませんでした。
もう馬鹿にされたくない…
事故を起こしたくない…
恐怖と不安の日々から解放されたい…
でも、楽して儲けたい…笑
なんともあつかましい心構えで証券口座を開設し、株取引を開始。
そうしてたしか、1週間ほどたったころでした。
数回の取引で、
なんと資金が250万→350万に増えたのです。
「ぐひひ…やったぜぃ」
ぼくは、ここでキッパリと身を引き、
儲けたお金を就職活動の資金にあてることに
…
できるはずもなく…笑
「ぐひひ…1週間で100万!1カ月で300万はイケる!」
「ぐひ~ひひひ…これで天下を取れる!!」
「ぐひょ~ふぇっふぇ」
欲の皮つっ張りまくりの、よだれダラダラ
これ以上ないほどの有頂天となり、
持っている資金すべてを迷いなく株取引にぶち込みました。
「これで稼げるようになって…彼女と結婚するんだ…」
ありがちなフラグびんびんですが、
この当時、本気でそう思ってたんですよ。
その彼女が、
すでに自分に愛想を尽かしているとも知らずに。
朝、目覚めとともに背筋が凍る
そして
きたる運命の朝。
数日間、
投資した資金にそれほど動きはなかったものの、未来に希望しかなかったぼくは
口笛をふきつつ
ルンルンな気分でPCを起動します。
ギヒヒ・・・今日の株式市場はどうかな~?
「…ん?なんじゃこりゃ」
ぼくが使用していた証券会社が、
システムエラーにより取引ができない状態に。
「まじかよ…」
この時、非常に嫌な予感がしたのを覚えているのですが、
ばっちり的中します…笑
9時の株式市場の開始とともに、
ぼくが全ての資金を注ぎ込んで購入していた銘柄の株価が、
あれよあれよと暴落していったのです。
本来ならあきらめて売ってしまっているところ、
使っている証券会社のシステムがストップしたままなので、
指をくわえて見ているしかありません。
淡々と書いていますが、
当時は本当に、みるみる血の気が引いていきました。
血液どこいった!?
くらいに真っ青でした。
本来であれば、
証券会社を2社使うなど、資金を半分ずつに分散していれば、
いわゆる両建て(買った銘柄と同じ株数だけ「空売り」する、つまり株価が変わっても設けも損もしない状態です)をすることで、システムエラーによる損失は避けられました。
どちらにせよ、何のリスク管理もしなかった自分の管理が原因です。
結局、エラーが解消される頃には、
350万→20万に。
え…!?
しぎゃぴ~~~~!!
ドラクエで全滅しても
ここまでは減らねーよ!?
ぼくは何が起きたのか全く理解できず。
いや、理解したくない。できない。
詰んだ!笑
ほんとこれでした。
しばらくして、落ち着いて考えられるようになると
もう恐ろしいほどの、
後悔のような念があふれ出てきました。
これ以上減ってしまったら、生活ができない…就職活動もできない…
自分はいったい何をやっているのか。
なぜなんのリスク管理もしなかったのか。
これまでの我慢は何だったのか。
着たい服も買わず、
美味しいモノも食べず、
旅行にもいかず、
冬の寒空のもとでも
毎朝早起きして、
日が暮れるまで運転して、
ヘトヘトになるまで重いものを運んで。
それでもタクシーのミラーを跳ねとばして、
高速道路で死にかけて、
そうしてそうして、
ようやく貯めたお金だったはずが。
一瞬で吹き飛んでしまった。
そして数日後、ショックも癒えないうちに、
当時の彼女に、ありのままを話しました。
すると、
彼女は言いました。
何が起きたかはよくわかった。
けど、
あなたが心の底からこのことを
反省しているなら
一緒にまたやりなおそう
信じてるから
…というのはぼくの妄想で、
彼女は、いかに僕に対して愛想が尽きたかを
ぼくを地球の中心まで突き落とし、
異世界にはじき飛ばさんという勢いで
話しはじめたのです。
……
「あんたさ」
「急に仕事を辞めたと思ったら、突然、分かりもしない株に手を出して」
「あっという間に、貯金をほとんど吹き飛ばしてしまっただ?」
「バッカじゃないの?」
「それだけじゃない」
「何かあればすぐに弱音吐くし」
「何かあればすぐに他人のせいにするし」
「問題が起きても自分のチカラで立ち向かおうとしないし」
……
彼女はそんなぼくに対し、すでに愛想が尽きていたとのことでした。
この時の彼女から発される、
絶望のような怒りのような、
凍り付くような侮蔑の視線は、
いまだに忘れることができません。
ぼくは、貯金を吹き飛ばしたショックと、
彼女の重い重い胸の内を聞かされた2重のショックで、
完全に意気消沈してしまいました。
「一生そうやってろ!おまえは一生変われない!」
それが、ぼくに対する彼女の最後の言葉でした。
このことばを聞いた当時のぼくは、
自分はなんて不運なんだ、
自分はなんて可哀そうなんだ、
と、自分のことしか考えていませんでした。
しかし、
今にして思えば、
3年もの間、
好きで時間を共にし、
お互い結婚まで考えていた相手に対し、
こんなセリフを言わなければならないなんて、
どんなに悲しく悔しい気持ちだったか。
本当に申し訳なかったです。
しかし、
当時はただただ、
「貯金も彼女も失ってしまった…」
「苦しい…なぜこうなってしまうんだ…」
「なぜ何をやってもダメなんだ…」
そんな風に、どうしても自分のことしか考えられませんでした。
というより、
自分のことを考えることしかできなかったのです。
家に帰り、3日間くらいは部屋で一人ふてくされていたでしょうか。
ようやく、
「ここはいったん、マジメに働いて再起するしかない。」
前を向いて、再び歩き出す決心をしました。
この時、ふとつけたテレビの特集
「高齢化社会が目前に迫ってきています」
ああ、次はこれだ。
ぼくは
「高齢者が増えるなら、介護に行けば食いっぱぐれないはずだ!」
これまた安易な気持ちで、介護の道を志すのでした。
しかしこの介護業界が
めちゃくちゃ地獄のサバイバルな世界だったことを
もちろん知る由もありませんでした。
【第5章】へ続きます↓
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